「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き・・・・・・」 「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思う位」 「民さんはそんなに野菊が好き・・・・・・道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」 「政夫さん・・・・・・私野菊の様だってどうしてですか」 「さアどうしてということはないけど、民さんは何がなし野菊の様な風だからさ」 「それで政夫さんは野菊が好きだって・・・・・・」 「僕大好きさ」 |
民子は余儀なき結婚をして遂に世を去り、僕は余儀なき結婚をして長らえている。民子は僕の写真と僕の手紙とを胸を離さずに持って居よう。幽明遥けく隔つとも僕の心は一日も民子の上を去らぬ。 |