行さきは 雪のふぶきに とぢこめて 雲に分け入る 志賀の山越え | (風雅) | 京極為兼 | |
梓弓 春の山辺を 越えくれば 道もさりあへず 花ぞ散りける | (古今115) | 紀貫之 | |
山がはに 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり | (古今303・百) | 春道列樹 | |
白雪の ところもわかず 降りしけば 巌にも咲く 花とこそ見れ | (古今324) | 紀秋岑 | |
朝かぜに うばらかをりて 時鳥 なくや卯月の 志賀の山越 | 蓮月尼 | ||
むすぶての しづくににごる 山の井の あかでも人にわかれぬるかな | (古今404) | 紀貫之 |
楽浪の 志賀の辛崎 さき幸くあれど 大宮人の 船待ちかねつ | (万) | 柿本人麻呂 | |
やすみしし 我大王の 大御船 待ちか恋ふらむ 志賀の辛崎 | (万) | 舎人吉年 | |
夜もすがら 浦漕ぐ舟は 跡もなし 月ぞのこれる 志賀のからさき | (新古今) | 宜秋門院丹後 | |
浪の花 沖から咲きて 散り来めり 水の春とは 風やなるらむ | (古今) | 伊勢 | |
天地を 嘆き乞ひのみ祈 幸くあらば また反り見む 志賀の唐崎 | (万) | ― | |
氷ゐし 志賀の唐崎 うちとけて さざ浪よする 春風ぞ吹く | (詞花) | 大江匡房 | |
夜の雨に 音をゆづりて 夕風を よそにそだてる 唐崎の松 | (近江八景) | 近衛政家 | |
われならで 誰かは植ゑむ 一つ松 心して吹け 志賀の浦風 | (常山紀談) | 明智光秀 | |
よる波の いつつの色は 緑なる 松にも残る しがの唐崎 | (新千載集) | 慈円 | |
唐崎の 松は扇の要にて 漕ぎ行く船は 墨絵なりけり | (古今) | 紀貫之 |
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桜さく 比良の山かぜ 吹くままに 花になりゆく 志賀のうら浪 | (新古・千載) | 九条良経 | |
にほの海 春は霞の 志賀の波 花に吹きなす 比良の山風 | (家集) | 俊成卿女 | |
漕ぎ出でて 月はながめむ さざなみや 志賀津の浦は 山の端ちかし | (家集) | 源頼政 | |
楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ | (万1715) | ||
なかなかに 君に恋ひずは 比良の浦の 海人ならましを 玉藻刈りつつ | (万) ― | ||
我が船は 比良の湊に 榜ぎ泊てむ 沖へなさか離り さ夜更けにけり | (万) | 高市黒人 | |
比良のみなとの 朝ごほり 棹にくだくる 音のさやけさ | (続後拾遺474) | 顕昭 | |
雪ふるる 比良の高嶺の 夕暮れは 花の盛りに すぐる春かな | (近江八景)近衛政家 | ||
大比叡や をひえのおくの さざなみの 比良の高根ぞ 霞みそめたる | 香川景樹 | ||
見わたせば 比良の高根に 雪消えて 若菜つむべく 野はなりにけり | (続後撰) | 平兼盛 | |
花さそふ 比良の山風 吹きにけり こぎゆく舟の 跡見ゆるまで | (新古今) | 宮内卿 | |
楽浪や 志賀の浦わの 水の面に 氷吹きしく 比良の山風 | (壬二集) | 藤原家隆 | |
峰寒き 比良の山おろし 雪散りて 汀吹きしく 比良の山風 | (飛鳥井集) | 藤原雅経 |