この奥の空地は、もと延命地蔵堂のあったところで、礎石が散乱し、わずかに往時を偲ばせている。 江戸時代末期の歌舞伎脚本作家河竹黙阿弥の作で、丸子宿と宇津ノ谷峠を舞台にした「蔦紅葉宇都谷峠」というお芝居がある。 盲目の文弥は、姉が彼の将来を憂いて京で座頭の位を得させるために身売りして用立てた百両を持って京に上る。 文弥は、道中、護摩の灰 提婆の仁三に目を付けられながら丸子宿にたどり着く。 一方、伊丹屋十兵衛は、かつての主人の恩義で借りた百両の返済工面のため京の旧知を頼ったが目的を果たせず、失意のうちに江戸へ戻る途中、丸子に投宿する。 丸子宿の旅籠藤屋にこの三人が同宿したことが、文弥の百両をめぐる凄惨な結末への始まりとなる。文弥の百両ほしさに十兵衛が宇津ノ谷峠で文弥を殺害してしまう芝居の山場、『文弥殺し』の舞台がここ延命地蔵堂前である。 延命地蔵尊は、現在宇津ノ谷の慶龍寺に祀られており、縁日は、毎年8月23・24である。 平成10年8月 丸子路会 
地蔵堂跡 宇津ノ谷 駿河区 静岡市 静岡県