慶龍寺は、天正6年(1578)歓晶院第四世宗旭和尚が開いた曹洞宗の寺で、当山の鎮守として延命地蔵尊(弘法大師作)が祀られており、本尊は十一面観世晋曹薩である。 当寺は、室町時代から伝わる「十団子」が有名で、毎年8月23・24日の両日催される縁日の際に、この「十団子」が参詣者に売られている。 この「十団子」の由来を要約すると、昔、宇津ノ谷峠に旅人を食べてしまう鬼が現われるため、諸人の難を救おうと在原業平の祈願によって地蔵菩薩が旅憎に姿を変えて、宇津ノ谷峠で鬼と対決した。旅憎は人間の姿に化けて現われた鬼に「すみやかに本体を現せ」と言うと、たちまち6mの鬼の姿に変身した。「なるほど、お前の通力はたいしたものだ。今度は、できるだけ小さくなってわしの手のひらに乗ってみよ」。鬼は「よし」と答えて小さな玉となって旅僧の手のひらにぴょんと飛び乗った。旅憎はいち早く手に持った杖で、その玉を砕き「お前はこれで仏になった。これから旅人を苦しめてはならぬぞ」と悟し、砕かれて十粒になった鬼を呑み込んでしまった。その後、鬼の災いもなくなり、道中守護のために、お団子を数珠の型にして「十団子」を作り、魔除けとしたもので、それが今も当寺に伝わっているのである。  昭和60年1月  静岡市
慶龍寺 宇津ノ谷 駿河区 静岡市 静岡県