桐の花、紫に咲きたるは、なほをかしきを、葉のひろごりざまうたてあれども、また、こと木どもとひとしう言うべきにあらず。唐土にはことごとしき名つきたる鳥の、選りてこれにしもゑるらむ、いみじう心ことなり。まして琴に作りて、さまざまに鳴る音の出で来るなど、をかしなど、世の常に言ふべくやはある。いみじうこそはめでたけれ。 | |
桐の花が紫に咲いているのはやはり美しく、葉の広がりかただけはいやな感じがするけれども、また他の木などと同列に並べて論ずべきではない。中国ではおおげさな名前がついた鳥(鳳凰)が、選んでこの木にすむというのは、格別な感じがする。まして桐を琴に使って、そこからさまざまな音色が出てくることなどは、おもしろいなどと世間並みのことばで言えようか。たいそうすばらしいものである。 |
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