鎖雲寺は、江戸の初め、当時早雲寺の山内にあった一庵を引いて建立された禅寺です。この寺には、「箱根霊験記」で有名な勝五郎と初花の墓があります。
”此らあたりは山家ゆえ紅葉のあるのに雪が降る・・・・”とはご存じ歌舞伎狂言に名高い浄瑠璃の一句で初花の夫勝五郎を恋うる名台詞であります。父の仇敵を追って箱根山中に差しかかりましたが、不図したことから勝五郎の病は募るばかりに、大望を抱く身の勝五郎の病状を案じた初花は夜毎に夫の眠るのを待って向山の滝で身を淨め箱根権現へ夫の病気平癒と仇討成就の願をかけひまさえあれば山中に深く分け入り天来の薬餌で名高い自然薯を掘り集め夫に薦めるのでした。初花の一念天に通じ慶長4年8月遂に仇敵の佐藤兄弟にめぐり合い見事に本懐を遂げさせたと言う。貞女初花の伝説は4百年後の今日でも何か私達の心にひしひしと深い感銘を覚えさせるものがあります。二人の眠る墓はこの寺の境内の墓地に誰が建てたか哀惜の比翼塚として葬られております。どうか皆様もご供養のつもりで香華を手向けて戴きたいと存じます  昭和48年3月吉日  はつ花そざ店主 小宮吉貼晴 建立
勝五郎・初花の墓 鎖雲寺 須雲川 箱根町 足柄下郡