車坂 前川 小田原市
   鳴神の声もしきりに車坂 とどろかしふるゆふ立の空   大田道灌
戦国兵乱の世の和歌集に「平安紀行」があります。「平安紀行」の作者は、大田道灌とする説と異説とする説がありますが、その前文に「車坂という里にてゆう立しきりに降りそえば」とあり、この時に詠んだものです。

   
浜辺なる前川瀬を逝く水の 早くも今日の暮にけるかも  源実朝
「吾妻鏡」
建保元年の条に記録があり、源実朝が鎌倉を出て箱根、伊豆のニ権現に参拝する際、前川まで来た時、正月でも洪水があったとみえ河を渡ることができず、日暮れまで待つ間に詠んだものです。

   
浦路行くこころぼそさを浪間より 出でて知らする有明の月   北林禅尼(阿仏尼)
「十六夜日記」
は、阿仏尼が夫の逝後、先妻の子為氏と我が子為相との相続争いの訴訟のため、京を発ち鎌倉に下る紀行文です。その前文に酒匂に泊り、あす鎌倉へ入るとあり、この時に詠んだものです。