かんざし燈籠(八坂神社) 久保2丁目 尾道市 広島県
江戸時代の末、ここから程近い芝居小屋にそれはそれは美しい、しかしどこか寂しい影があってあまり客のつかないお茶子がいた。お茶子とは観客にお茶や座布団、時にはお酒の接待などもして心付けをもらう女性をいう。そのお茶子に浜問屋の若旦那が恋をした。内気な少女のそんな心もとなさがかえって、豪商の跡取りながらひとりの多感な若者の心に火をつけたのだったが、身を飾るかんざし一つとてないお茶子の姿を見た親はこんなみすぼらしい娘を嫁に迎えるなどもってのほか、とその恋を許さない。お茶子は井戸に身を投げ、この大銀杏の木の下に「かんざしを下さい」と哀しい声で訴える幽霊が出るようになった。この灯龍はそのあわれを慰めようと心ある人々がお金を出し合って奉納したものという。尾道商工会議所婦人会