伝説によれば、今から千二百年ほど前に、弘法大師が諸国を巡行の折、この地に立ち寄り、湧き水でのどを潤そうとして休憩しました。その際、地面に挿した杖が根づいたのが逆ヒバといわれ、杖はそのまま根を張って大きくなったといわれています。 この逆ヒバは、植物名をクロベやクロビ、またはネズコなどといわれています。これは、心材が黒いヒノキ科の一種という意味でこの名があります。クロベは本州や四国に分布していますが、特に中部以北の深山に多く、県内では、所々の山地の岩石地や尾根などに見られます。 逆ヒバは、根元の直径が約2m、幹の周囲が約4.75mあります。県内の植栽されたクロベの中で、最も古い大木といわれ、これに次ぐものとしては、釜石市の鵜住神社境内や盛岡市太田の太田薬師神社境内などに残っています。 逆ヒバという呼び名は、幹が太くなっても根元のほうが細くその上のほうが太くて、あたかも杖の様子を連想させることから、この名がつけられたともいわれています。 逆ヒバは奥州街道(国道四号、奥羽街道)の西脇に立ち、古くから街道を往来する多くの旅人に親しまれ、見守られてきましたが、すぐ脇にある子守観音の神木としても大切にされてきました。 また、逆ヒバの下にある湧き水は、旅人の喉の渇きをいやしたといわれていますが、近年は、周囲の環境の変化によって涸れかかってきています。 平成16年3月1日  石鳥谷町 石鳥谷町教育委員会

逆ヒバ 石鳥谷町小森林 花巻市 岩手県