文治5年うる4月、高館落城のとき、主君義経とその妻子の、悲しい最後を見とどけ、死力を尽くして奮闘し、敵将諸共燃えさかる火炎の中に飛び込んで消え去った白髪の老臣、兼房、年66、元禄2年5月、芭蕉が、門人曾良とこの地を訪れ、「夏草」と、「卯の花」の二句を残した。白く白く卯の花が咲いている。ああ、老臣兼房奮戦の面影が、ほうふつと目に浮かぶ。古来、ここに霊水がこんこんとわき、里人、いつしか、卯の花清水と名づけて愛用してきた。 行きかう旅人よ、この、妙水をくんで、心身を清め、渇きをいやしそこ、「卯の花」の句碑の前にたたずんで、花に涙をそそぎ、しばし興亡夢の跡をしのぼう。  昭和50年卯月30日  平泉町観光協会

卯の花に兼房みゆる白毛かな 曽良

卯の花清水 平泉柳御所 平泉町 西磐井郡 岩手県