雪はしだいに激しくなり、樅の木の枝が白くなった。空に向かって伸びているその枝々は、いま雪を衣て凛と力づよく、昏れかかる光の中に独り、静かに、しんと立っていた。 「――おじさま」 宇乃はおもいをこめて呼びかけた。すると樅の木がぼうとにじんで、そこに甲斐の姿があらわれた。 山本周五郎「樅の木は残った」より |
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(前略)「樅の木は残った」は決して単なる歴史的人物の評価の引っくり返しだけのものではありません。作者の新しい人間像の創造であり、永久に悪名を甘受して主家のために殉じた主人公原田甲斐は山本周五郎の分身であり、作者の人格の反映です。 大いなる小説「樅の木は残った」を書いた偉大なる作家山本周五郎を讃え、原田甲斐が斬死して3百年の今日、ゆかりの地船岡城址の樅の木の下に建立されました。 昭和45年3月27日 柴田町 柴田町観光協会 |