辛崎の 松は花より 朧にて  芭蕉
 唐崎は古くから景勝の塘として数々の古歌などに取り上げられ、また、日吉大社西本宮にかかわる信仰や祭礼の場としても知られてきました。加えて「近江八景」の一つ「唐崎の夜雨」の老松との景観は、天下の名勝としてしばしば安藤広量らの浮世絵などにも取り上げられてきました。 現在、境内の中程に位置する松は三代目の松で大正10年に枯死した二代目の松にかわって、その実生木を近くの駒繋ぎ場から移植したもので、樹齢は150年から200年と推定されています。また、二代目の松は、天正9(1581)年に大風で倒れた一代目にかわり、同19年に新庄駿河守らが良木を求めて植え替えたもので、幹周囲9mに及び、枝を多数の支柱に支えられた天下の名木として知られていました。今も境内の各所に残る枝を支えた石組みや支柱の礎石が往時の雄大さを忍ぱせています。 現在の唐崎は、史上に見える景観ではないものの、湖上に突き出た岬状の地形と老松が織りなす景観は今なお優れており、その歴史的由緒と、「近江八景」を具体的に体現できる数少ない場の一つとして貴重といえます。なお、当地は平安時代からの大祓の場と老えられ大津市の史跡にも指定されています。平成11年3月 滋賀県教育委員会
 名勝 唐崎 唐崎1丁目 大津市