元禄2年5月9日(1689・陽暦6月25日)塩釜から舟で松島に着いた芭蕉は、小憩ののち、瑞厳寺に参詣した。・・・・瑞岩(厳)寺に詣、当寺三十二世の昔、真壁の平四郎出家して入唐帰朝の後開山す。其後に、雲居禅師の徳化に依て七堂甍改りて、金壁を輝、仏土成就の大伽藍(藍)とはなれりける。彼見仏聖の寺はいつくにやとしたはる。 「おくのほそ道」の行文は、簡潔に寺伝を述べ「金壁荘厳」の大伽藍の光景を、印象的に写し出している。 瑞巌寺は九世紀、慈覚大師を開基とする天台宗の寺院、青竜山延福寺(松島寺)として創建され、(中略)伽藍を完成した。建築は、全休として禅刹の風格を保ち、内部に極彩色の彫刻や金碧画の襖などを収め、桃山芸術の粋をつくしている。本堂・庫裡・回廊は、国宝に指定されている。 雲居は瑞厳寺中興と言われる高僧で、政宗の招請を受け伊達忠宗のとき、同寺九十九世を継いだ、芭蕉参禅の仏頂の師でもある。瑞巌寺境内の、嘉永四年(1851)建立の「松島の文碑」は、芭蕉碑中でも屈指のものであろう。碑の側面の句中、乙二の句には、」「古今を壓して独り卓然」の子規評がある。

 瑞厳寺 松島町 宮城郡