歌人西行(1118〜1190)がこの地にて「月にそふ桂男のかよひ来てすすきはらむは誰が子なるらん」と一首を詠じて悦に酔っていると、山王権現の化身である鎌を持った一人の童子がその歌を聞いて「雨もふり霞もかかり霧も降りてはらむすすきは誰が子なるらん」と詠んだ。西行は驚いてそなたは何の業(なりわい)をしているのか聞くと「冬萌(ほ)きて夏枯れ草」を刈って業としていると答えた。西行はその意味がわからなかった。童子は才人が多い霊場松島を訪れると恥をさらすとさとしたので、西行は恐れてこの地を去ったという伝説があり、一帯を西行戻しの松という。西行に関するこのような伝説は各地にあり、古くから語り継がれている。  (*桂男=美男子 *業=仕事 *冬萌きて夏枯れ草=麦)  平成17年6月  松島町教育委員会

西行戻しの松 松島町 宮城郡