常夜燈 雲出島貫町  津市 三重県
伊勢街道の雲出島貫の宿は雲出川の渡しをひかえ、参宮客で賑わう宿であった。当時の絵図を見ると、街道の両側に民家や宿屋が建ち並び、水路があちこちで道を横切っており、中心部には、本陣、その近くには高札場があった。 堤防下の毘沙門堂の境内には「島貫の松」(県の天然記念物に指定されていたが、伊勢湾台風後に枯れた。)があり、当時の旅人の目をなごませていた。江戸時代には、柏屋、魚屋、紀の国屋、大和屋などの旅籠があり、昭和の初めころまでは、津屋、京屋、大阪屋などが残っていたが、参宮鉄道が敷設されたころから、宿の灯りが徐々に消え、今は、本陣跡に「史蹟明治天皇島貫御小休所址jの碑と常夜燈がひっそりと残るのみである。 この常夜燈は、かっては渡し場ロにあったもので、高さ4.6m、竿石にはF奉献」「天保五年甲午三月建」と刻まれている。明和八年(1771)、天保元年(1830)などに、おかげ参りが全国的に流行し、その旅人の安全や神宮への析願のために多くの常夜燈が建てられた。 常夜燈は、一般には、夜道の安全を確保するために、一晩中、火をともしておく燈火のことで、とくに参宮道者のために建てられたものを「参宮常夜燈」という。この島貫の常夜燈もその一つで、当時の風情をしのばせている。