前略 
村人たちの中には雁の声で目をさます者もおりました そして ああ今年も雁か来る頃になったと思ぃながらいつしか又涙ぃ眠りに落ちてゆくのでした  こうして雁たちは村人たちのあたたかぃまなざしに見守られながらひと冬を過すのでした   やがて遠くに見える山々の深い雪も溶け出す頃になると雁たちは生まれた韃靼国へ帰って行かなければなりませんでした 雁たちは帰りの道のりの遠いのが心配でした 中略
井手のお宮の神様にお願いしました どうかここに生えている葦の葉を一枚づつ下さいと願いは聞き届けられある日クチパシに葦の葉を一枚づつくわえて飛び立ってゆきました そしてつかれたら海の上に草の葉を浮かべその上で翼をやすめるのでした 葦の”舟”に乗った雁の姿が波間にいくつもいくつも漂っていました 井手のお宮の葦の葉はこの時から片方ないそうな 以下略
井戸(井手)跡・片葉の葦(井手神社) 永井 菰野町 三重郡 三重県