八房と狸の墓 犬掛 南房総市 千葉県
八房伝説
この地犬掛は、文化11年(1814)江戸時代の文学者曲亭馬琴作『南総里見八犬伝』に登場する舞台であり、八犬士の母である里見伏姫の愛犬”八房”の生誕の地であります。 時は室町時代、百姓技平の家に一匹の雄犬が生まれました。ある夜、母犬は狼に襲われ食い殺され、子犬は不思議にも生き残りました。乳を与える母親がいない子犬を、不憫に思う独り者の披平でありましたが、野良仕事が忙しく容易に子犬の世話ができず、育成をあきらめておりました。しかし、不思議なことに、子犬は日増しに丸々と太り成長をしてまいります。不思議に思った技平はある夜、子犬の様子をそっと窺っておりました。すると、驚くことに夜更けて、富山の方角から年老いた一匹の狸が、子犬に乳を与えに来るではありませんか。この様子は村じゆうに語り継がれ、『狸に育てられた犬』としてうわさは広がりました。このうわさは、城主里見義実の耳にとどき、子犬を召し寄せられ、名前も”八房”と命名され、義実の愛娘伏姫の愛犬として、寵愛されるに至りました。後に、この八房が伏姫と共に伏姫籠穴で暮らすという『南総里見八犬伝』物語の中でも大変有名な場面が、世に発表されることになります。名犬〃八房”の生い立ちが、こうして狸に育てられたという、美しい動物物語として、長くここ犬掛地域に語り継がれてまいりました。 この像は、子犬を育てた、一匹の狸と名犬”八房”を偲び、いつの時代にも、この美しい物語を、多くの人に語り続けようという意味から建立したものであります。平成7年2月吉日 富山町