元禄海嘯菩提地蔵尊(別願院) 保田 鋸南町 安房郡 千葉県
元禄16年(1703)11月23日(新暦12月31日)午前2時頃、房総半島沖を震源域とする推定M8・2の大地震が発生しました。世に元禄地震と呼ばれています。地震により発生した海嘯(津波)で、東京湾岸や九十九里海岸を始め、関東各地は甚大な被害を受けました。関東一円で、死亡者が8千人以上におよぶことが、調査により判明しています。ここ保田(浦)地区でも、実に319人もの方々が亡くなられ、当別願院に埋葬されました。当山に於いても、この津波により、本堂が流失し、師宣を含む多くの墓石が海底に沈んだと、伝えられています。周りの無縁仏の中には、命日が発生日のものも見受けられます。その昔、津波罹災者追福の為、茅葺の地蔵堂が建てられていました。これも流失や焼失が重なり、その後犠牲者を合祀した石仏地蔵となり、「元禄海嘯菩提地蔵尊」と名づけられました。現在のお地蔵様は、明治期に寄進されたものです。毎年、施餓鬼会に塔婆を奉納し、元禄海嘯遭難者諸霊のご冥福をお祈りしております。また、地元住民からは、霊験あらたかな「いぼとり地蔵さん」としても、長い間親しまれており、香華の絶えることかありません。後方の石塔は、関東大震災直前の大正12年(1923)4月1日、221回忌に建立された津波慰霊碑です。