「近江八景」
瀬田の夕照 粟津の晴嵐 石山の秋月 比良の慕雪 唐崎の夜雨 堅田の落雁 矢橋の帰帆 三井の晩鐘
明治29年 新編教育唱歌 明治43年 尋常小学読本唱歌
1.
三井寺の鐘の音 澄み渡る夕ぐれ
初雁も堅田に 声たてて落ち来ぬ
ひとり立てる 
唐崎の老松(おいまつ)
雨か 波か 淋しげに響くは

2.
今もなお身にしむ 
粟津野の秋風
いずかたぞ 昔の 兼平の石碑(いしぶみ)
瀬田の夕日 とこしえに淋しく
比良の暮雪 いつ見ても美し

3.
月の影さやかに 澄み昇る
石山
千代かけてしのぶは 紫のその筆
山田
矢走(やばせ) 見え渡る名どころ
さして帰る 舟の帆も三つ四つ

1.
琵琶の形に 似たりとて
其の名を負える 湖の
鏡の如き 水の面(おも)
あかねながめは 八つの景

2.
まず渡り見ん 
瀬田の橋
かがやく入日 美しや
粟津の松の 色はえて
かすまぬ空の のどけさよ

3.
石山寺の 秋の月
雲おさまりて かげ清し
春より先に 咲く花は
比良の高嶺の 暮の雪
4.
滋賀
唐崎の 一つ松
夜の雨ぞ 名を得たる
堅田の浦の 浮御堂
落ちくるかりも 風情あり

5.
三つ四つ五つ うち連れて
矢橋をさして 帰り行く
白帆を送る 夕風に
声程近し 
三井の鐘