洞口家住宅 中小路 名取市
洞口家住宅は、名取平野の水田地帯にあって、宅地面積1500坪周囲は幅3mの堀と、いぐね(防風林)に囲まれ、「館やしき」「たてのい」と呼ばれる旧家である。また、このあたりは集落全体に堀と、屋敷林の地割が残され、近世農村社会の環濠集落の姿を残している。この住宅の建立時期は、祈とう札、年なわなどの資料、建築構造手法から、江戸時代の宝暦年間(1751〜1763)とされ、少なくとも18世紀前半にさかのぼることができる。国指定の主屋(母屋)は田の字型4間取りを基本とする「名取型」と呼ばれ、保存修理後は桁行12間、梁行6間と、旧仙台領最大規模に属する。屋根は、寄棟造、茅葺で建物内部は床上部が桁行5間を占め「なかま」、「でい」、「ちゃのま」、「なんど」、「こなんど」となっており、床上部と土間の間仕切はない。土間は広くて、太い多角形の上屋柱が独立して立ち、特に土間境に復元された化粧柱は他に例がない。この豪壮な梁組は旧仙台領内の大型農家の特色をよく示し、年代の古い点でも価値が高い。附指定の表門・馬屋は明治中ごろの建立であるが、この屋敷の景観の重要な要素となっている。  名取市教育委員会