川端康成文学碑 湊町 岐阜市 岐阜県
大正10(1921)年、川端康成氏は加納にある寺の養女となっている伊藤初代さんに会うために、友人とともに三度にわたって岐阜市を訪れ、この時の体験を「篝火」「非常」「南方の火」などの短編小説に描きました。長良川畔の宿の二階から、長良川を下って来る鵜舟を見る様子が次のように書かれています。

「あ、あの篝火は鵜飼船だ!」私は叫んだ。「あら、鵜飼ですわ。」「ここに流れて来るんだろう。」「ええ、ええ、この下を通りますわ。」金華山の麓の闇に篝火が小さく点々と浮かんでいる。(中略) 舳先の篝火は水を焼いて、宿の二階から鮎が見えるかと思はせる。そして、私は篝火をあかあかと抱いている。焔の映ったみち子の顔をちらちら見ている。こんなに美しい顔はみち子の一生に二度とあるまい。