遥なる行末をかゝえて、斯る病覚束なしといへど、羇旅辺土の行脚、捨身無常の観念、道路にしなん、是天の命なりと、気力聊とり直し、路縦横に踏で伊達の大木戸をこす。
伊達の大木戸は文治五年藤原泰衡と源頼朝両軍決戦の遺蹟にして二重隍今なおその面影を留む。元禄二年芭蕉翁この地を過り「奥の細道」千古の名文を残す。これを慕いて訪れる者また跡を絶たず。里人ここに相図りて、樹木を払い、草を刈り、長坂の茶屋跡なる奥州街道の一部を復元し、碑を建つ。
芭蕉翁碑 旧奥州道中国見峠長坂跡 国見町 伊達郡