飯坂小唄にうたわれる「ちゃんこちゃんこおりて−」とはここの石段(73段)で「滝の湯」に降り摺上川畔での清遊の道でありました。「滝の湯」とは瀑布湯ともかき、お湯が自然に湧き滝のように流れていたところから名づけられ、古来鯖湖湯・波来湯・赤川湯とともに飯坂の名湯に数えられ文人歌人の詩情をそそり愛され、また共同浴場として町の人々や湯治客から親しまれ利用されてきましたが、惜しくも昭和12年火災によって焼失、元禄の昔、俳聖松尾芭蕉が大鳥城主佐藤庄司一族の忠誠に涙し、みちのく行脚の疲れを癒したと伝えられる名湯も廃止されましたが、「熱の湯・冷えの湯」の跡にその面影を偲ぶことができ、また芭蕉ゆかりの碑があり地名ともなって残されています。「ちゃんこちゃんこ」−−その土地の方言を口ずさみ人情の機微にふれることも旅の思い出となることでしょう。 昭和57年 福島飯坂ライオンズクラブ

芭蕉ゆかりの碑
其夜飯塚(飯坂)にとまる。温泉あれば湯に入て宿をかるに、土坐に筵を敷て、あやしき貧家也。灯もなければ、ゐろりの火かげに寝所をまうけて臥す。夜に入て雷鳴、雨しきりに降て、臥る上よりもり、蚤・蚊にせゝられて眠らず。持病さへおこりて、消入斗になん。短夜の空もやうやう明れば、又旅立ぬ。猶、夜の余波心すゝまず、馬かりて桑折の駅に出る。
「滝の湯」と「ちゃんこちゃんこ」 飯坂温泉 福島市