麻吉旅館 中之町 伊勢市 三重県
麻吉の創業は明らかでありませんが、天明2年(1781)の古市町の屋並図に記されているので、それ以前であることは確かです。もと花月楼といい、茶屋でありました。明治時代県下では珍しい3層楼として、伊勢音頭の舞台も持ち、芸妓も30人ほど常時抱えた県下第一級の大料理店でありました。麻吉の伊勢音頭は「つづら石」といい、近傍の巨大な名石を主題としたものでありました。現在4棟の中心建物があり、いわゆる崖造りで最上層まで6層階に及んでいます。この最上層からは、はるかに朝熊山・二見なども遠望でき、聚遠楼の名で宣伝されました。多くの文人たちの会も盛んでありました。憲政の神様尾崎咢堂が来勢のとき必ず常宿したという、閑静な離れの部屋も保存されています。麻吉は、かっての古市街の華やかさを偲ぶことのできる、唯一の遺構となっています。