旧中村家住宅 中歌町 江差町 檜山郡 北海道
ハネダシ
江差を中心に西在郷に発達した特殊な倉庫建築である。この地域は海岸段丘が海にせまり、海岸平野に乏しく宅地が挾隘で、しかも海浜と宅地の落差が大きいという条件下に適応する建造物として生まれたものである。 砂浜に太い大きな掘立て柱を建て一階とし、その上に二階として宅地をはみ出して(ハネダシ)建てられているので、この呼称がついたのであろう。「ハネダシ」の用途は多目的で家業によって種々である。問屋や海産商等の商家では、荷物の積降しの時は、ハネダシのそばまで弁財船や艀が入って、ハネダシの階段(一階から倉庫に通ずる)に歩板を渡して荷役する。 あるいは、鰊漁期には、柱に落し込み板を入れて「ローカ(沖揚げした鰊を一時貯蔵するところ)」として使用する。また、漁家では常時、漁具庫、二階は番屋にも利用した。一般的には、一階は穴蔵ともよばれ道具庫であり、二階は倉庫や仕事場に使用した。普通二階部分に物見用の窓が付けられ、二階下見板に各家の屋号が大きく付せられていた。