新屋聖観音は、古くから新屋の村人の守り神として祀られてきた観音様である。ご神体の聖観音像は像高約40cm、一本造りの立像で、微笑をたたえ優しい面相をしているものの、全体的に粗削りで素朴な彫り物である。作者と製作年はともに不明であるが、そう古い彫り物ではない。新屋聖観音の由来について、小国開闢の伝説に登場する主税介(田沢内匠介の弟)が祀ったとの言い伝えもあるが、疑問である。「新庄領村鑑」の記載とか堂宇内に納められた文化元年(1804)の「覚」(木札)から見て、この観音様が祀られたのは宝暦年間(1751〜1764)から文化元年までの間と言えそうである。文化期からの新屋聖観音の信仰を伝えるものとして、文化10年(1813)奉納の絵馬、文政年間(1818〜1830)建立の石灯籠などがある。新屋の人々は、長い間、この聖観音を「金神様」として崇めてきたという。昭和51年以後、新屋に人家はなくなったが、その後も例年、8月18日に新屋にゆかりある人びとによって祭りがたてられ、聖観音信仰が絶えることなく続いている。また、観音堂内には小国西国三十三観音の第24番、11面観音も合祀されており、三十三観音参り、あるいは7観音参りの信者も少なくない。  昭和61年10月  山形県最上町
新屋聖観音 富澤 最上町 最上郡 山形県