世界の七不思議

中学時代の愛読書のひとつに毎年買う年鑑があった。知識の宝庫のような雑誌で、世界中の地理や歴史が絵写真を添えて楽しく書かれている。いかにも少年少女の好奇心をそそるような編集になっていて、必ずしも勉強に係わるものに限らない。歴代のオリンピック金メダル受賞者や、プロ野球記録データ、陸上世界記録一覧、著名映画俳優や歌手等、雑学の宝庫で、クイズマニアの必携書である。

なかでも私が強く引かれたのが「世界七不思議」という項目だった。現代人の想像や理解を絶するような事物が、かって実在していたのだ。その記述はいかにも壮大・ロマンティックで、少年の夢を駆り立てずにはおられない。行ってみたい。見てみたい。すべてが外国にある。外国にはそんなにすごい所があるのだと・・・・。

今まで、このことについてゆっくり思いをめぐらせる機会がなかった。今ならそれができる。そのいくつかでも実際この目でみたのだから、少年のときとは違って、いくらかは冷静にみられるというものだろう。

世界の七不思議というアイデア自体は世紀前のギリシャ時代からあった。ギリシャ語で「ヘプタ・テアマータ」といわれていたものであるが「テアマータ」とは「見るべき物」というもので「不思議」という意味ではなかった。ヘレニズム世界の「七大観光名所」くらいのつもりで選んだのであろう。その後英語で「ワンダー」と訳され日本語で「不思議」となった。その後対象をギリシャ世界から全世界に広げリストが書き換えられ、現代では建築遺跡のみならず不可解現象まで対象とされている。

いくつかの「七不思議リスト」を掲げておこう。最も古いリストはギリシャの数学者フィロが選んだもので、一般に
「古代の七不思議」として広く知られている。

ギザのピラミッド
バビロンの架空庭園
アレクサンドリアの大灯台
ロードス島のアポロの巨像
オリンピアのゼウス像
小アジアの貿易都市エフェソスのアルテミス神殿
小アジア、ハリカルナッソスにあったマウソロス王とアルテミシア女王の霊廟

の7つである。現存しているのはギザのピラミッドのみで、他はすべて想像に任せるしかない。
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「新世界の七不思議」は、古代の七不思議以外の建築物や、目的不明の人工物を含んでいる。

ペルーのナスカ高原にある、はちどりや猿などの動物や様々な記号の地上絵
エジプトの王家の谷
イギリス南部ソールズベリーにある巨大な石組の遺跡ストーンヘンジ
宇宙から肉眼で確認できる唯一の人工物といわれる万里の長城
南米チリ沖3700キロにあるイースター島のモアイ像
コンスタンチノープルの聖ソフィア寺院
クメール帝国の首都にあった石像寺院カンボジアのアンコールワット

また、あるリストによると、新世界リストの1、2、5、7にかえて、下記を選んでいる。
ローマのコロセウム
アレクサンドリアのカタコンベ
イタリアのピサの斜塔
南京の陶塔
 
次は
『古代の不思議』の著者、レオナード・コットレルが選んだ世界七不思議である。

クレタ島のミノス宮殿
エジプト、ルクソールのテーベ・ネクロポリス
王家の谷(ファラオの呪い)
シリアのパルミュラの都
エルサレムの岩のドーム(円屋根)
シリアのクラク・デ・シュヴァリエ
デルフィの神託

さて、
「現代の七不思議」は、さらに生物や超能力までも適格となった。
宇宙人とUFO
雪男(ビッグ・フット)やネッシーなどの未確認動物
古代において水没したといわれるムー、アトランティス、レムリアなどの失われた大陸
人体自然発火現象、物が勝手に飛んだり家具が移動したりする現象、超能力などの超常現象
不思議な消失事件の起こるバミューダ海域の謎

そのほかに地球自体が作り出した傑作としての
「自然七不思議」がある。

ネパールのエベレスト山
ザンビアのヴィクトリアの滝
オーストラリアのグレイト・バリア・リーフ
北極のオーロラ
メキシコのパリクチン火山
リオデジャネイロの港
グランド・キャニオン

いずれも自然の芸術作品にふさわしい美を具えている。

次も自然七不思議リストであるが、美というよりはむしろ自然現象の驚異・不思議が基準になっている。
死海(沈まない海)
アルジェリアの砂の海
ティベットの氷の滝
アラガラ山上の怪光
ノルウェーの夜の太陽
北アメリカの化石木の山
ハワイの火の湖(溶岩湖)

いずれにしろ以上は文句なしの世界観光名所である。
時間的、経済的に効率が悪いのを承知の上で、いくつか七不思議ツアーなるものを組んでみた。
私なりのコースを設定してみる。

・西ヨーロッパ・コース
   ソルズベリー・ストーンヘンジ、ネス湖、ノルウェイ白夜、北極オーロラ

・イタリア・ギリシャ・コース
   ローマ・コロセウム、ピサの斜塔、デルフィ、オリンピア、クレタ島ミノス宮殿、コンスタンチノープルの聖ソフィア寺院

・シリア・パレスチナ・エジプト・コース
   ギザのピラミッド、王家の谷、ルクソールのテーベ・ネクロポリス、アレクサンドリアのカタコンベ、
   シリアのクラク・デ・シュヴァリエとパルミュラ、エルサレムの岩のドーム、死海

・アフリカ・コース
   ザンビアのヴィクトリアの滝、アルジェリアの砂海

・アジア・コース
   エベレスト山、ティベットの氷の滝、アンコールワット、万里の長城

・北米コース
   グランド・キャニオン、化石木の山、メキシコのパリクチン火山、ハワイの火の湖

・南米・オセアニア・コース
   リオデジャネイロ港、イースター島のモアイ像、グレイト・バリア・リーフ


これまで世界七不思議という言葉を聞くたびに、なんとなく数字があわないなという感じを持っていた。それもそのはずで、30以上もの不思議を漠然と受けとめていたのだ。これでいくらか頭がすっきりした。